古語「かなし」の意味

古文の授業は大嫌いでした。古臭くて、日本語なのにすらすら読めないような大昔の文章をどうして勉強しなければならないのか、疑問でした。現代の日本語ですら、分からないことが多くあるのに、わざわざ古文を勉強する意味がよく分かりませんでした。あるとき、古文の先生が古語の「かなし」の説明をはじめました。いつもは眠くて、先生の話を殆ど聞いてはいないのだけど、「かなし」の話は印象に残りました。古語の「かなし」は悲しいという意味ではなくて、悲しくなるぐらい相手のことが好きだ、愛おしいという切ない気持ちなんだと先生は言いました。その説明を聞いただけで、切ない気持ちになりました。なんと美しい言葉なんだろうと思いました。そのとき私にとっては初めて、古文を勉強する意味が少し分かったように思います。つまり、「悲しい」という現代の言葉は、もともと「切ないくらい好きだ」という語源を持っているということを知っているか、知らないかで、言葉の重みが変わって来ると感じたのでした。